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GRとDGRの違いと選び方|もらい事故を防ぐ地絡保護

更新: 2026-06-16 23:32:52中村 誠一
GRとDGRの違いと選び方|もらい事故を防ぐ地絡保護

GRとDGRは、どちらも高圧受電設備の地絡保護に使う継電器ですが、見ているものはまったく違います。
GRがZCTで捉えた零相電流の大きさだけで動作するのに対し、DGRはZPDの零相電圧を基準に位相まで判定し、自構内方向の事故だけを選びます。
区分開閉器の更新見積もりでGR付きからDGR付きへの変更を提案したときも、差額の根拠はこの一点にありました。
施設管理者に説明するときも、「DGRはGRにもう一つの目を足したものだ」と押さえると、もらい事故を避ける理由が一気に通じます。

GRとDGRの違いは『方向を見るかどうか』の一点

GRとDGRの差は、地絡電流の大きさだけを見るか、零相電圧を基準に方向まで見るかの一点に尽きます。
GRはZCTで拾った零相電流が整定値を超えると、電流の来歴を問わず動作するため、構外の地絡でも自構内を止めてしまうことがあります。
DGRはZCTの零相電流にZPDの零相電圧を組み合わせ、位相差で自構内方向かどうかを見分けるので、もらい事故を避けやすいのです。

結論:DGRはGRに『方向判定』を足したもの

GR付きPASが単純なのは、零相電流が0.2Aの整定を超えたかだけで判定できるからです。
構造が簡潔で扱いやすい反面、他需要家や配電線側で起きた地絡でも、構内ケーブルの対地静電容量を通る充電電流を拾えば動作してしまいます。
実際、区分開閉器の銘板を確かめたときにGR付きのままで、こう長の長い構内ケーブルがそのままもらい事故の弱点になっていると分かったことがあります。
見た目は同じPASでも、中身の判定ロジックが違うだけで停電のしかたが変わる。
そこが肝です。

DGRはここに零相電圧の情報を足し、電流と電圧の位相差から事故が構内向きかを判断します。
つまり、電流があるかどうかだけではなく、その電流がどちらから来たかを見ます。
施設管理者から「GRとDGRは何が違うのか、なぜ差額が出るのか」と問われた場面でも、方向判定の有無だけで説明するとすぐ納得が得られました。
もらい事故の有無という結論差は、現場ではこの一点に収れんします。

GR付きPASとDGR付きPASの呼ばれ方の違い

呼称も機能差にそのまま対応しています。
地絡継電器付きのPASはGR付PAS、地絡方向継電器付きはDGR付PAS(方向性SOG付)と呼び分けます。
見積もり書や銘板に出てくる表記の差は、単なる言い換えではなく、零相電流だけで落ちる設備か、零相電圧まで見て方向判定できる設備かを示す実務上の区別です。
現場で型式を追うときは、この呼び名を押さえておくと読み違いが減ります。

なぜ今は受電点でDGRが基本になっているのか

現在の高圧受電設備では、受電点の区分開閉器にDGRを置くのが基本になっています。
高圧ケーブルの長こう長化と太線化で対地静電容量が増え、構外地絡のときに構内へ波及的な充電電流が流れやすくなったからです。
こうした条件では、GRのままだと健全な需要家まで止めるリスクが残ります。
だからこそ、構内事故のときだけ動作する方向判定が標準になり、こう長の長い設備ほどDGR前提で考えるのが自然になるのです。

ZCTとZPDで地絡をどう検出するのか

ZCTとZPDは、地絡検出の役割を分担する部品です。
ZCTが三相電線をまとめて流れる零相電流を取り出し、ZPDが地絡時に現れる零相電圧を拾うことで、GRは「電流が出たか」、DGRは「どちら向きの事故か」まで見分けます。
後段のもらい事故や整定は、この2つをどう組み合わせるかで決まります。

ZCTが零相電流を取り出す仕組み

ZCT(零相変流器)は三相の電線を一括して貫通させる構造なので、平常時は三相電流の和がつり合い、検出器にはほとんど出力が現れません。
地絡が起きると電流バランスが崩れ、その差分として零相電流だけが浮き上がります。
GRもDGRも、まずこの入口で「異常な電流が本当に流れたか」をつかむわけです。

現場でZCTを見るときに厄介なのは、電源側と負荷側の貫通方向を取り違えると、方向判定の意味が逆転してしまう点です。
結線確認で指差し確認を入れるのは、単なる習慣ではありません。
事故電流の向きを読む装置では、向きの取り違えがそのまま誤判断につながるからです。
おすすめです、こうした確認は省かないでおきましょう。

ZPDが加える『電圧の基準』という情報

ZPD(零相電圧検出器)は、地絡時に現れる零相電圧を検出します。
ZCTだけでは「どれだけ流れたか」しか分からないのに対し、ZPDがあると電流を比較するための基準が手に入ります。
DGRはこの基準を使って、零相電流が零相電圧に対してどちら側へ振れているかを見ます。

最大感度の位相が非接地系で遅れ約30度、リアクトル接地系で遅れ約60度になるのも、この比較のためです。
0度ではなく少しずらすのは、対地静電容量による進み電流の影響を織り込むためで、事故方向の見極めを安定させるための設定だと考えると分かりやすいでしょう。
DGRは単に「電圧も見ている」装置ではなく、位相差で判断する装置なのです。

GRにはZPDがなく方向が分からない

GR(地絡継電器)はZCTのみで動作し、零相電流が整定値を超えれば一律に動作します。
構造は単純ですが、構外で起きた地絡でも、構内の高圧ケーブルの対地静電容量を通じた充電電流を拾ってしまうことがあります。
こうしたもらい事故では、健全な自構内のPASが開いて停電につながるため、GRだけでは防ぎきれません。

現場で盤を確認すると、GR付きだと思っていた設備が実はDGRだった、あるいはその逆だった、という見分け直しに出くわすことがあります。
ZPDの有無を追うだけで、装置の役割が一気に整理されるのは面白いところです。
受電点の区分開閉器でDGRが基本になるのは、長こう長化したケーブル設備ほど静電容量が増え、GRだけではもらい事故を避けにくくなるからで、ここを押さえると後段の整定の意味も見えやすくなります。
おすすめです、まずはZCTとZPDの違いから整理してみてください。

もらい事故はなぜ起きるのか

もらい事故は、配電線や近隣の需要家で起きた地絡が引き金になり、健全な自分の構内にあるGRが動作してPASを開放し、結果として構内全体が停電してしまう現象です。
原因は自分の設備の外にあるのに、自分だけが止まる。
現場でこの理不尽さを目にすると、設備の健全性とは別に、保護方式そのものを見直す必要があると痛感します。
近隣事故の波及で突然落ちる構内は、日常運用の安定を静かに削っていくのです。

もらい事故とは何か

もらい事故とは、他の需要家や配電線で発生した地絡事故の影響を受けて、健全な自分の構内の継電器が動作し、PASが開いてしまう現象です。
自構内に故障がなくても停電に至るため、保守担当者から見ると最も説明しづらいトラブルの一つでしょう。
しかも外部要因なので、現地で点検しても異常が見つからないことが多く、原因切り分けに時間がかかります。
近隣の事故波及で構内が止まり、調べたら自構内には異常がなかった、という流れはこの典型です。

対地静電容量と充電電流が引き金になる

引き金になるのは、高圧ケーブルの対地静電容量です。
構外で地絡が起きると、健全な構内ケーブルの静電容量を通じて充電電流が流れ、その電流がZCTを励磁して零相電流として現れます。
GRはこの電流を自構内の地絡と区別できないため、整定値を超えれば動作してしまいます。
近年はこう長の長い需要家でケーブルのこう長長化・太線化が進み、静電容量が増えやすくなりました。
だからこそ、外部事故の巻き添えでPASが開放し、構内が突然停電するリスクが高まるのです。
こうした設備では、事故が自分の敷地の外で起きたかどうかが、停電の有無を左右します。

実際、こう長の長い需要家でGR運用を続けていると、近隣事故のたびに構内が止まる場面が出ます。
そこでDGR化を計画し、保護方式を方向判定付きに切り替える判断につながるのです。

DGRが構外事故で動かない理由

DGRは、零相電流の大きさだけでなく向きまで見て判定します。
構外事故のときに流れる零相電流は、自構内事故のときと逆位相になるため、DGRは動作領域に入りません。
つまり、電流が流れていても「どちら向きの事故か」を見分けられるので、巻き添えの開放を避けられます。
方向という一情報が入るだけで、もらい事故の連鎖を原理的に断ち切れるわけです。

この違いは更新後に最もはっきり出ます。
こう長の長い需要家でDGRへ更新した後は、近隣で事故が起きても構内が止まりにくくなり、運用は目に見えて安定します。
保守の現場では、この「事故は起きたが、自分の構内は守れた」という差が決定的です。
PASを不用意に開放しない保護方式へ替えることが、もらい事故対策の核心になるでしょう。

GRとDGRどちらを選ぶか

高圧受電設備でGRとDGRを分ける起点は、こう長と対地静電容量です。
ケーブルが長くなるほど充電電流が増え、構外事故のたびに自分の設備側まで引きずられる危険が高まるため、長こう長の需要家ではDGRを前提に組むのが自然です。
短い設備ならGRで済む場面もありますが、迷った時点で安全側に倒すならDGRを選ぶ判断になります。

こう長・対地静電容量で見る判断軸

設計レビューで新設の単線結線図を見ると、まず確認するのは受電点から末端までのこう長です。
そこで充電電流を概算し、GR案では構外事故時のもらい事故を十分に抑え切れないと読めたため、DGR案に修正して採用されたことがありました。
こう長が伸び、対地静電容量が大きくなるほど地絡時の振る舞いは重くなるので、単に「保護装置が付いている」だけでは足りません。
設備の実態を数値で見て、どちらが安全かを先に決めるのが筋です。

受電点はDGRが基本という考え方

受電点の区分開閉器、PAS・UGS等にはDGRの設置が基本となっています。
これは波及事故を防ぎ、本来停電する必要のない構内まで巻き込まないための標準的な設計だからです。
古い設備でGR付きのまま運用されていた需要家でも、こう長と更新時期を踏まえると、保守の延長ではなくDGR化を勧めるほうが妥当な場面が多くあります。
現場では「今は動いている」より「次の事故でどこまで守れるか」を優先して考えましょう。

GRが許容される限定的なケース

GRで足りるのは、対地静電容量がごく小さい極短こう長のケースに限られます。
電力会社の配電用変電所側の地絡保護との協調も避けて通れず、整定や方向特性は配電網に影響を与えない範囲で合わせる必要があります。
受電点でDGRを置くのは、この協調を成立させる意味も持ちます。
極めて短いケーブルでない限り、安全側に倒してDGRを選ぶ運用が一般的で、後から悩むより初期にDGRへ寄せたほうが結果として低コストになりやすいでしょう。

整定値と動作試験の勘どころ

整定値は、零相電流0.2A、零相電圧5%、動作時間0.2秒を起点に見ると判断しやすいです。
多回線フィーダでも0.2秒が目安になり、上位保護との協調を崩さないことが前提になる。
点検ではまず銘板と記録がこの値にそろっているかを確認しましょう。

標準整定値の目安

零相継電器の点検で最初に見るのは、設定そのものが現場の運用と食い違っていないかどうかです。
零相電流0.2A、零相電圧5%、動作時間0.2秒という標準的な整定値は、保護の感度を確保しながら不要動作を抑えるための基準であり、多回線フィーダでも上位保護との協調を崩さない範囲で使う考え方が軸になります。
銘板と記録の一致確認を先に済ませると、その後の試験結果の読み違いを防げます。

動作値・動作時間の合否基準

動作試験では、零相電流と零相電圧をそれぞれ徐々に増やし、整定値に対して±10%以内で動作すれば正常と判定します。
ずれが大きい継電器は、感度低下だけでなく調整不良や経年劣化の兆候を示していることがあり、現場では更新判断の材料になります。
実際に、動作値が整定の+12%ほどずれていた個体を見つけたことがあり、結果として劣化と判断して更新につなげました。
試験値は単なる数字ではなく、設備の信頼性を示す温度計のようなものです。

方向特性と慣性特性の確認

DGRでは、大きさの合否だけでなく方向特性試験が欠かせません。
最大感度位相付近で正しく動作し、逆方向では動作しないことを確かめて初めて、方向判定が生きていると言えます。
点検の現場でZCTの極性ミスを見つけたことがあり、結線を修正してもらったことで事故リスクを取り除けました。
さらに、JIS C 4609では整定値の400%の零相過電流を50ms通電しても動作しない慣性特性が規定されており、瞬時の外乱で不要動作しないかも確認対象になります。

更新時期と日常の点検ポイント

PASや区分開閉器は、見た目が保たれていても内部の劣化が進んでいることがあり、更新判断を外観だけで済ませるのは危険です。
更新推奨時期は10〜15年が一般的な目安で、年数に加えて外箱の発錆、絶縁測定、継電器特性試験の結果を合わせて見ていくと、誤不動作の芽を早めにつぶせます。
現場では、経年で内部部品が少しずつ劣化し、動作特性や方向特性がずれていく前提で計画を立てるのが筋です。

PAS・区分開閉器の更新目安

製造から13年経過したGR付PASで、外箱発錆と絶縁低下が重なった案件では、更新時にDGR付へ仕様変更する計画を組みました。
こうした場面で効くのは、単に「古いから替える」という判断ではなく、停電の組み方と将来の保守性まで一緒に見ることです。
開閉器交換と継電器更新を別々に行うより、まとめて進めた方が停電回数も費用も抑えやすく、施設側の納得も得やすいでしょう。

継電器特性試験で見るべき点

継電器は内部部品の経年劣化で、動作特性や方向特性が少しずつずれていきます。
そこで毎年の特性試験データを並べ、動作値の推移を見える化すると、整定値からの逸脱やばらつきの増え方がはっきりします。
実際にそのグラフを施設管理者へ示したところ、「まだ動いている」ではなく「このまま使い続けると危ない」という感覚に変わり、更新時期の合意が取りやすくなりました。
もらい事故や不要動作の予防は、こうした地道な確認で決まります。

更新を前倒しすべきサイン

更新を前倒しすべきサインは、外箱の著しい発錆、絶縁抵抗の低下傾向、試験時の動作値のばらつき増大、そして製造からの長期経過です。
ひとつだけなら経過観察で済む場面もありますが、複数が重なると劣化が表面化している可能性が高くなります。
外観がまだ使えそうでも油断は禁物で、こうした兆候がそろった時点で早めの取替を進める方が、結果的に止電リスクを抑えやすいのです。

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中村 誠一

大手ビル管理会社で12年間、商業ビル・マンションの電気設備管理を担当。キュービクルの点検・更新計画の策定を200件以上手がける。